みなとみらいの電飾さん。

国語科に関することを書いています。詩も投稿しています。ほとんど備忘録ブログです。

【詩】準備

平日に家の中を整えるのは 初めてかもしれない 平日の住宅街は 鳥の声だけが響いているものなんだ 君を歓迎する準備なんだ 仕事から離れた昨夜 新しい仕事に就いた今朝 カレンダーで区切られた夜明け 詩が落書きされた歩道橋の橋桁 気持ちを区切るカレンダー…

【詩】想像する側面

耳の形は 鼻の形は おでこの広さは 瞳の色は 髪の毛あるかな ないかな 指の柔らかさ どんな声かな 出会う前に想像するのは なんだかんだ外見ばかりだ けれど 君と初めて外の世界で出会ったその瞬間から 想像するのはきっと 君が過ごす毎日の中身と 君の心の…

【詩】10月になった

10月になった 夜が寒くなった 10月になった 君の誕生日が来る 君の誕生日は 10月の何日ですか 君だけが そう 君だけが 君の誕生日を 決められるんだよ

【詩】喉が泣いている

喉が泣いている 40日ぶりの授業でしたから 酷なことをしました 一日中 誰かと話し続けている職種なんだなあ

【詩】親友に会う

何年振りに会っても ここ数年の近況を全く知らなくても 顔を見て元気だったよかったなあと 心から思えるから 親友だと自分で思っている 親友という言葉は 友達に序列をつけるようで あまり好きじゃないんだけれど 歳を取れば取るほど ああ よかった また会え…

【詩】詩が滲む日

たった1時間駅前を歩いただけで 詩がいくつも滲んでくる日がある 生活圏内半径1キロに まだ知らない詩の砂利道がいくつあるんだろう

【詩】買い物カート

駐車場に置きっぱなしの 買い物カートを見るたび すごく黒い言葉が出る あなたはどう?

【詩】金を殴る

マルコメくんみたいな少年が 銀行の壁で微笑む 栄一と梅子と柴三郎を殴りつけていた 止めてあげればよかったな マルコメくんのこと なにせ新しい彼らは実体化してくるらしいから やり返されないように気をつけなさい って

【詩】見えないところ

手首のレントゲンを撮ったら 骨がキレイだと褒められた 見えないところを褒められると 非常にくすぐったいとわかった

【詩】バンパーを壊す

バン!という音がして バンパーが壊れた 提出物をなくしてしまいました と言わずに 提出物がなくなりました と言う生徒の顔が浮かんで苦笑いしてしまった 自分も同じじゃないか バンパーは勝手に壊れたのではなく 僕がバンパーを壊したのであった ベテランペ…

【詩】データを消す

消してしまったパソコンの中のデータ 自分の手で消してしまったのを覚えているのに 夢の中で復元して涙が出るほど喜んでいる それくらい大事なデータだけど だけど あのときは そんなに大事に思っていなかったんだなあ あのとき データを消したとき 3回くら…

【詩】麺をすする

いつのまにか 麺をすすれるようになっていた TVに映る芸能人が 麺をすすっているのを聞いて あんな音を立てて食べられたことなんてない と 自分の不器用さに落胆したのはわりと昔 人生で いつのまにか できるようになっていることなんて 少ないんだろう 口笛…

【詩】うねりを感じる

過去から来た人なのか 未来から来た人なのか そのあたりは はっきりしないけれど 話しかけようと君に重ねた掌に 君の足の指のうねりを感じている 今から君は人になる

【詩】声の見える駅

新幹線の窓ガラスの分厚さが 僕の指紋に記憶されている 見送りに来てくれた祖母が 窓ガラスの向こうでジェスチャーしている 顔の筋肉を目一杯動かして 面白い表情をして 僕を笑わせてくれている 口の筋肉を目一杯動かして 必死に伝えようとして 僕に 伝えて…

【詩】謝々。

私のせいでなくても 私の謝罪で前に進むなら 私、いくらでも謝るわ 私のふとした行動で 誰かが感謝してくれるのは 私、なんだか嬉しいわ おんなじ字を書くのね 謝罪の謝も 感謝の謝も 私、なんだか嬉しいわ でもね 自分のミスをただただ隠そうとして どうし…

【詩】返事

言葉も姿も見えないが 確かにそこに在る心臓 今のノックは返事だと 幸せに勘違いしている 僕たち

【詩】プール

くるくると円を描きながら 暗いプールで泳いでいると思います かすかな光が見えたかもしれないけど 無視していいよ まだ泳ぎ足りないのですから

【詩】引退していく少年たち

引退していく少年たちの背中が見える 一番近くが 一番遠くへ 逆さまになったアルファベットのような 同じようで もう二度と戻れない日常が見える 初夏の風が耳元でささやく 「来年の夏もまた アルファベットが逆さまになるよ」と

【詩】歩道橋に点いた電気

歩道橋に点いた電気 虚しい 照らすのは 呼吸が死んだ会社員 歩道橋に点いた電気 卑しい 照らすのは ライバルを嵌めた会社員 歩道橋に点いた電気 照らせ!天使! 丑三つ時に舞い降りた天使 寂しい

【詩】私服

勘違いしていた慣用句の本当の意味を知った 近所の右折信号の本当の意味も知った 毎日 一つずつ学んでいる しかも 筋肉痛を誤魔化している スーツ姿の私 夕陽はいつも電車の窓枠を仄白く染めて 流れていく運転手たちの瞳を貫く いつか私服でこの電車に乗るこ…

【詩】白い泡

捨てたいから 千切っているのに まとわりついてくる 発泡スチロール 指先から白い泡 吹いても消えない 吹いたら消えない 全部 そう 全部 ゴミ袋に閉じ込めたはずなのに 2時間後に気づく Tシャツから白い泡 捨てたいのに 忘れたいのに まとわりついてくる 八…

【詩】ノックはいつでも

おやおや? こんな真夜中に こんな早朝に こんなときにノックですかい? ノックの音で確かめてる 君のこと

【詩】少年の主張

色の無い揺籃や 声の無い宇宙で 少年は主張していた 俺は少年なんだ!と

【詩】待ちぼうけ

さっきテールランプが暑さを運んできたこととか ターミナル駅の喧騒シャワーの水圧とか アルコール消毒液の突き刺さるような香りとかを 君と共有する日を待っているんだ ずっとね

【詩】暁の寝床

君が 目をこすっていた 僕は 機械越しに眺める 眠いのかな? まだ話せない君に話しかける 暁の寝床

【詩】また さようなら

眠りについた瞬間は 忘れても 眠れなかったことは 忘れられない 早歩きの日も 泣いてしまった日も あなたの言葉だけに 頬を寄せる あいだのない嘘 かき混ぜて 絡めとった小指の味見で 誤魔化して いつか言えたら…とか 嘯いて 簡単な計算問題を あえて選んで …

【詩】ハンカチを投げつける神様

赦せないから 赦さないでいたのだ 簡単に赦してたまるものか 赦したら 悔し涙を詰め合わせたあの毎日に顔向けできない ドクダミの香りをわざと嗅いでいるように 欠けた印鑑に八つ当たりしているように 赦さないでいたのに 神様がハンカチを投げつけてきて 赦…

【詩】はっし

今日 祖母が旅立って 今日 雨が降っていて そう 祖母は いつも 僕が小さい頃の 雨のある日を 祖母は 何度も 思い出して うれしそうに 話していた アスファルトに水 踏切の黄色と赤 急に雨が降ってきたら はっしはっし! と 僕は 言って走り出したのだそうだ …

【詩】霧雨の街

この 痩せた小柄な風貌だろうか この 弱そうな第一印象だろうか 理不尽な人たちがよってたかって 自分を軽く見る理由は 軽く見られる ことを 極度に嫌う ことを 前面に 押し出すと 我慢が 足りない プライドが 高い と言われ思われ いや 思われそうで という…

【詩】beat

誰もいない空き地の隅っこで エイトビートを刻む君を こっそり眺めて笑った四つの瞳 無名のままでいいから君らしく生きてほしい